株式会社の監査役の職務、資格、任期等について

本日は商業登記の内容です。
株式会社において、取締役と並ぶ重要な機関として、「監査役」があります。

今回は監査役とはどういうものか、職務や資格、任期等について簡単に解説します。

監査役は会社の会計監査及び業務監査を行う

「監査役」とは、取締役と同様に株式会社の役員とされる機関です。(会社法第329条第1項)
取締役が業務執行の機関であるのに対し、「監査役」は名称どおり、会社の監査を行う機関です。
具体的には、業務監査と会計監査です。

業務監査は、取締役(会計参与設置会社の場合は、取締役及び会計参与)の職務執行が法令や会社の定款に違反していないかについての監査です。

会計監査は、会社の会計(会社が法令に従って作成する貸借対照表などの計算書類)が適正かどうかの監査です。

監査役はこれらの監査を行い、監査報告書を作成します。
また、必要に応じて取締役会や株主総会に出席して意見を述べたり、取締役等の不正行為や法令違反等について報告します。

これらの職務遂行に伴って監査役には、さまざまな権限があります。
以下は、その主要なものになります。

  • 取締役等や使用人、さらに自社の子会社などに対しても事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
  • 取締役の不正行為や法令や定款に違反する事実等を報告するために必要があると認めるときは、取締役等に対し、取締役会の招集を請求することができる。
    (その招集の通知が法定の期間内に発せられ無い場合は、その請求をした監査役が取締役会を招集することもできる。)
  • 取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、その行為をやめることを請求することができる。

このように監査役は、会社の事業を適切に運営していく上で重要な機関になります。

監査役になれる者は、取締役とほぼ同じだが、兼任禁止の規定がある

監査役になれる者については、取締役とほぼ同じになります。(会社法第335条第1項)
(詳細については、当ホームページのコラム「取締役の資格」をご覧下さい。)

内容を意訳すれば以下のようになります。

  • 監査役は権利能力のある個人としての人間(自然人)である必要があり、また定められた法令違反で刑に処された者は監査役になれないという制限もある。
  • 公開会社(株式の譲渡に会社の承認が不要な会社)は、「株主しか監査役になれない」ようにすることはできない。
    (逆に、公開会社でない株式会社(株式の譲渡にその会社による何らかの承認が必要な会社)は、それができる。)
  • 成年被後見人等でも監査役になれる。


取締役と異なる点として、
監査役は、株式会社もしくはその子会社の取締役、支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、執行役を兼ねることができない。
(会社法第335条第2項)
とされていることです。

これは、会社の監査を適切に行うためだと考えられます。

取締役会設置会社、会計監査人設置会社には監査役は必ず置かなければならない

取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならないとされています。(会社法第327条第2項)
例外として、公開会社でない会計参与設置会社については、監査役の設置を要しないとされています。

会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)も、監査役を置かなければならないとされています。(会社法第327条第3項)

逆に監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならないとされています。(会社法第327条第4項)

また、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができるとされています。(同法第389条第1項)
この「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」は、法改正によって、平成27年5月1日から登記事項になりましたので、登記申請を忘れないようにしなければなりません。

以上をまとめると下記のようになります。

原則監査役を置かなければならない会社①取締役会設置会社
(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は除く)
②会計監査人設置会社
(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は除く)
例外1監査役を置いてはならない会社監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社

例外2監査役を置かなくてよい会社
(置くこともできる)
公開会社でない会計参与設置会社
例外3監査役の権限を会計監査のみにできる会社
(業務監査権限がない)
公開会社でない株式会社
(ただし、監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)

監査役の任期は原則4年(例外あり)

会社について定められた法律である会社法において、監査役の基本的な任期は要約すると以下のとおり定められています。(会社法第336条)

  • (原則)
    監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
  • (例外1)
    公開会社でない株式会社において、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
  • (例外2)
    定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。
  • (例外3)
    上記の原則及び例外1、2にかかわらず、次の定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
  • 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
  • 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
  • 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
  • その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

監査役の任期のポイントとしては、取締役と違って基本的に任期を4年よりも短縮できないという点です。
例外的に短縮できるのは、上記(例外2)と(例外3)の場合です。

(例外2)は補欠として選任した監査役は前任者の任期を引き継ぐという定款規定を定めるものです。
例えば、2020年の定時株主総会で選任された監査役(任期4年)が本来なら2024年の定時株主総会の終結時までの任期であるところ、2021年に辞任した場合に、その補欠として2021年に選任された監査役は任期を引き継ぎ、2024年の定時株主総会の終結時に任期満了になるような場合です。
(任期を引き継いだので、2021年から2024年までの3年で任期が満了します。)

(例外3)は監査役という機関と密接に関わる定款内容を変更することによって、監査役の任期が途中で満了します。
監査役の退任の登記を忘れないように注意しなければなりません。

逆に、(例外1)の公開会社でない会社(株式の譲渡にその会社による何らかの承認が必要な会社)においては、定款で定めることにより任期を4年から最長で10年まで伸張できる点は取締役と同様です。


※取締役の任期については、下記のコラムもご覧下さい。

「株式会社の取締役の任期の基本①~会社法による規制~」

「株式会社の取締役の任期の基本②~定款による任期の規定~」

監査役の登記は北花田司法書士事務所へご依頼下さい

監査役も取締役と同様に会社にとって重要な職務を行う役員です。

その登記は忘れないようにしなければなりません。

一方で、最低限の人数の取締役だけで運営できるような小規模な会社においては、監査役を廃止しても良いかもしれません。

監査役を設置すべきかどうかのお悩みについても当事務所までご相談下さい。

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