株式会社の取締役の任期の基本①~会社法による規制~

本日は商業登記の内容です。
株式会社の業務執行を行う取締役には、任期があります。
任期が満了すると株主総会等で、新たな取締役を選任します。
新たな取締役は司法書士に依頼して登記すれば、社会一般に対して公示できます。

では、その取締役の任期の満了がいつなのか分かるでしょうか。
任期は「会社法」という法律によって規制され、同じ株式会社であっても任期として定められる期間が全く違うことがあります。
今回は、会社法による基本的な取締役の任期の規制について簡単に解説します。

会社法における株式会社の取締役の任期

会社について定められた法律である会社法において、取締役の基本的な任期は要約すると以下のとおり定められています。(会社法第332条)

  1. (原則)取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
  2. 公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
  3. 監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員以外)については選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。定款又は株主総会の決議による任期の短縮可。
  4. 監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員)については選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(定款又は株主総会の決議による任期の短縮不可。
  5. 指名委員会等設置会社の取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。定款又は株主総会の決議による任期の短縮可。

1.及び2.について

株式会社は、様々な観点から種類分けすることができます。
発行している全部の株式について、株主が譲渡・取得する場合に、その発行会社の承認が必要となる株式譲渡制限事項の定めが定款に設定されている会社を非公開会社といいます。

逆に、発行している株式の一部(又は全部)について、その発行会社の承認無しに株主が譲渡・取得できる会社を公開会社といいます。

1.及び2.の内容をまとめると以下のとおりとなります。

会社の種類設定可能な任期
1.公開会社2年以内
(原則は2年)
2.公開会社でない会社
(非公開会社)
10年以内
(原則は2年)

3.及び4.について

1.及び2.の「公開会社であるかどうか」という観点ではなく、「監査等委員会」という機関を設置している株式会社における取締役の任期について規定しています。(会社法第2条)

監査等委員会設置会社においては、「監査等委員である取締役」と「監査等委員でない取締役」が選任され、「監査等委員である取締役」は取締役の職務の執行の監査等を行います。(会社法第399条の2)

3.及び4.の内容をまとめると以下のとおりとなります。

監査等委員会設置会における取締役の種類設定可能な任期
3.監査等委員以外の取締役1年以内
(原則は1年)
4.監査等委員である取締役2年
(短縮不可)

5.について

1.及び2.の「公開会社であるかどうか」という観点ではなく、「指名委員会等(指名委員会、監査委員会、報酬委員会)」という機関を設置している株式会社における取締役の任期について規定しています。(会社法第2条)

指名委員会等設置会社においては、取締役会決議によって、取締役の中から指名委員会、監査委員会、報酬委員会の各委員会の委員を選定し、各委員会がそれぞれの権限において会社の経営を監督します。

5.の内容をまとめると以下のとおりとなります。

設定可能な任期
5.指名委員会等設置会社における取締役1年以内
(原則は1年)

まとめ

会社法の下では、非公開会社以外の株式会社の取締役の任期は、最長でも2年で満了するということが分かります。

特に監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社においては、任期1年の取締役がいます。
よって、毎年任期が満了する取締役がいて、株主総会等で取締役を選任し直す必要があるということになります。


自分の会社が監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社であるかどうかは、登記記録にその旨が記載されているので、確認することは容易です。
(登記記録は法務局に行けば確認することができます。)

監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社でない場合は、公開会社かどうかを把握する必要があります。
非公開会社は登記記録を確認して「株式の譲渡制限に関する規定」の有無や「発行する株式の内容」を見て確認することができます。

取締役の登記のご依頼は、北花田司法書士事務所へ

上記のとおり、株式会社の取締役の任期は会社法によって規制されています。
実際は、この規制の下で具体的な任期は会社の規則である「定款」によって定められています。

定款に基づく具体的な取締役の任期の把握については、また次回解説していきたいと思います。

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