取締役の資格

本日は商業登記の内容です。
株式会社の事業の経営は取締役が行っています。会社が衰退するのも、成長するのも取締役しだいです。
そのような重要な取締役の資格として法的に何が必要なのでしょう。
誰でも取締役になれる?
未成年者は取締役になれない?
成年被後見人でも取締役になれる?
今回は、取締役の資格について、簡単に解説します。
取締役になれない者もいる
「取締役の資格等」について、会社法という法律に定められています。(会社法第331条)
この法律上の「資格」とは、「取締役になるには司法書士『資格』や会計士の『資格』が必要」というような意味ではありません。
下記が、会社法第331条を要約したものです。
- 次に掲げる者は、取締役となることができない。
・法人
・下記の法律で定められた罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
(1)会社法
(2)一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(3)金融商品取引法
(4)民事再生法
(5)外国倒産処理手続の承認援助に関する法律
(6)会社更生法
(7)破産法
・上記の法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。) - 株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。
ただし、公開会社でない株式会社においては、この限りでない。 - 監査等委員である取締役は、監査等委員会設置会社若しくはその子会社の業務執行取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。
- 指名委員会等設置会社の取締役は、当該指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。
上記1のように、取締役には誰でもなれるわけではありません。
権利能力のある個人としての人間(自然人)である必要があり、また法令違反で刑に処された者に関する制限もあります。
また、上記2~4のように会社形態に関連した制限として、
公開会社(株式の譲渡に会社の承認が不要な会社)は、「株主しか取締役になれない」ようにすることはできません。逆に、公開会社でない株式会社(株式の譲渡にその会社による何らかの承認が必要な会社)は、それが可能になります。
監査等委員会設置会社という組織形態の会社には「監査等委員である取締役」と「それ以外の取締役」がおり、「監査等委員である取締役」は、取締役の職務の執行の監査を行うので、監査対象である職務執行を行う取締役、支配人等を兼務できません。
指名委員会等設置会社という組織形態の会社でも、取締役は業務執行を行う支配人等を兼務できません。
未成年者は取締役になれる
会社法第331条には、取締役になれない者として未成年者は挙げられていないので、未成年者でも取締役になることができます。
ただし、登記手続上、取締役就任等で印鑑証明書が必要になることがあります。
また、会社の事業を進める上で金融機関との取引等でも印鑑証明書が要求されることもあります。
印鑑証明書は市役所等で印鑑登録をする必要があり、15歳以上でないとできない場合が大半です。
したがって、15歳以上でないと会社の取締役として現実的に活動することは難しいかもしれません。
成年被後見人でも取締役になれるようになった
令和元年に会社法第331条が改正されるまで、取締役になれない者として「成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者」も規定されていました。
改正によって、この規定は削除されたので、現在は成年被後見人や被保佐人等も取締役になることができます。
ただし、通常の場合のように本人が取締役に就任することを承諾するだけでは取締役になることはできません。
成年被後見人や被保佐人が取締役に就任することに同意をし、成年後見人や保佐人が就任承諾をする必要があります。(会社法第331条の2)
成年後見人や保佐人は精神障害等によって判断力が低下した成年被後見人や被補佐人のために家庭裁判所で選任された者です。
また、成年被後見人や被保佐人がした取締役の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができないとも規定されている(同第331条の2)ので、慎重な判断が必要かもしれません。
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