もし、登記識別情報(登記済証)を紛失したら

本日は不動産登記に関する内容です。

不動産登記の手続きでは、自己の権利を証明する書類として登記識別情報(登記済証)が非常に重要です。
もし、それを紛失してしまった場合、自己の権利はどうなるのか。
登記手続きはできなくなってしまうのか?
書類の再発行はできるのか?

登記識別情報(登記済証)を紛失した場合について、簡単に解説します。
(登記識別情報及び登記済証についてはこちらのコラムもご覧下さい。)

登記識別情報(登記済証)の悪用を防止する方法

登記識別情報(登記済証)を紛失した場合でも、自己の権利が直ちに消滅してしまうわけではありません。
もし、紛失の理由が第三者による盗難などで、盗んだ書類が悪用されて、自己の権利が侵害されるおそれがある場合には対応策として、以下のようなことが考えられます。

1.不正登記防止申出制度

不正登記防止申出制度は、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に法務局に対して申出を行うことで、登記が悪用されることを防ぐことができる制度です。(不動産登記事務取扱手続準則第35条)

申出から3か月以内に登記が申請された場合に、申出をした者に対して登記が申請された旨を法務局が通知することにより第三者が権利者になりすまして登記を申請することを防ぐことができます。

登記申請には、登記識別情報(登記済証)だけではなく、印鑑証明書等も必要になる場合が多いので簡単に他人になりすまして登記を申請することができるわけではありませんが、登記識別情報(登記済証)だけではなく、印鑑証明書や本人確認書類なども一緒に盗まれてしまった場合は申出を検討すべきかもしれません。

2.登記識別情報の失効の申出

紛失したのが登記識別情報の場合は、その失効の申出を行うことができます。(不動産登記規則第65条)
(改正前の法律に基づいて発行された登記済証では申出はできません。)

不正登記防止申出制度は、「不正登記がされる差し迫った危険がある場合」にしか行えませんが、登記識別情報の失効の申出は盗難等の理由がなくとも行うことができます。

登記識別情報(登記済証)の悪用のおそれがない場合

登記識別情報(登記済証)の紛失の理由が、例えば火事で燃えてしまった場合のように第三者に悪用されるおそれが無い場合は、不正登記防止申出制度も登記識別情報の失効の申出も不要と考えられます。

登記識別情報(登記済証)が自分の登記手続きに必要な場合

紛失した登記識別情報(登記済証)は再発行することはできません。
登記識別情報(登記済証)は、不動産における権利を取得(設定)した時だけに、法務局から発行されるものだからです。

自己の権利の変更や抹消を行う正当な登記申請手続きの際には、登記識別情報(登記済証)を法務局に提供する場合が多いですが、紛失等の正当な理由で提供ができない場合はそれに代わる方法を採る必要があります。

1.事前通知制度

法務局の登記官は、登記申請受付がされた後、その申請書に正当な理由で登記識別情報(登記済証)が提供されていない時は、登記識別情報(登記済証)を本来提供する者(登記義務者)に対し、
「申請があった旨」
「申請の内容が真実であると考える場合は一定期間(約2週間)以内にその旨の申出をすべき旨」

を通知します。


通知に対して、登記義務者の申出が一定期間内にされた場合は登記手続が進み、申出がされない場合はその登記申請は却下されるという制度です。(不動産登記法第23条第1項)

2.資格者代理人による本人確認情報提供制度

司法書士等の資格者代理人が、登記識別情報(登記済証)を本来提供する者(登記義務者。この制度における本人)についての本人確認情報を作成し、登記申請時に法務局に提供し、法務局の登記官がその本人確認情報の内容を相当であると認めた時は、上記1.の事前通知を省略して、登記手続きを進めるという制度です。(不動産登記法第23条第4項第1号)

登記申請前に司法書士等の資格者代理人と登記義務者が面談し、資格者代理人は運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書で本人であることを確認した上で、登記識別情報(登記済証)が無い理由、面談内容(登記申請に至った経緯)、いつから面識があるのか等を記載した本人確認情報を作成し、法務局に提出します。
司法書士が作成する本人確認情報は、基本的に登記官に相当であると認められる内容なので、登記手続は滞りなく進んできます。

実務上は、事前通知が行われると一定期間内に申出がない場合に登記申請が却下されるリスクや登記完了まで時間がかかるので、登記申請を依頼された司法書士が本人確認情報提供制度を利用して、登記申請する場合が多いです。

3.公証人による本人確認認証制度

登記申請書等について公証役場の公証人から「登記申請人」が「登記識別情報(登記済証)を本来提供する者(登記義務者)」であることを確認するために必要な認証がされ、法務局の登記官がその内容を相当であると認めた時は、上記1.の事前通知を省略して、登記手続きを進めるという制度です。(不動産登記法第23条第4項第2号)

公証役場の公証人が、登記義務者が間違いなく登記申請人であることを身分証明書等で確認して書類を作成し、それを法務局に提出することで、上記2.の制度と同様に事前通知を行わずに登記手続きを進めます。

実務上は、上記1.や2.の制度と比べるとあまり使われない制度です。

このように登記識別情報(登記済証)が手元に無い場合であっても、1.事前通知制度、2.資格者代理人による本人確認情報提供制度、3.公証人による本人確認認証制度、のいずれかの方法を採ることで、登記手続きを進めることができます。

登記識別情報(登記済証)が無い場合は、北花田司法書士事務所へ
ご相談下さい。

不正登記防止申出制度や登記識別情報の失効の申出について、より詳細にお知りになりたい方は当事務所までご連絡下さい。

また、当事務所は、登記識別情報(登記済証)が無い場合であっても、案件内容に応じて、上記1.~3.の適切な制度の活用をご提案させて頂きます。

連絡先はこちらです。