戸籍謄本が本籍地以外の役所で取得できるようになる予定

本日は相続に関する内容です。
相続手続きに必要な戸籍謄本ですが、現在は原則、本籍地の市区町村役場でしか取得できません。
しかし、戸籍法の改正によって最寄りの市区町村役場で取得できるようになる予定です。

今回は、現行制度の戸籍謄本の取得方法と法改正で予定されている内容について簡単に解説します。

(戸籍や戸籍謄本については前回のコラムでも解説しております。よろしければご覧下さい。
 ⇒コラム「相続手続きに必要な戸籍関係書類の概要」

【現行制度】現在の戸籍謄本の取得は原則、本籍地の市区町村役場に請求

令和5年7月現在、戸籍謄本を取得するには原則、本籍地の市区町村役場に請求しなければなりません。

具体的には市区町村役場に実際に行って窓口等で手続きをするか、遠方の場合は申込書を作成し、市区町村役場に郵送して返送してもらう方法があります。

例外として、マイナンバーカードを利用したコンビニエンスストアでの証明書の交付手続きによれば本籍地の市区町村役場に行かなくても取得可能ですが、対応していない市区町村役場もあるようです。
また、手続きが可能であったとしてもマイナンバーカードが必要になり、発行には事前の申し込みが必要で即日発行はできません。

【現行制度】本籍地不明の時は、運転免許証や住民票の写しで調べる

そもそも、自分の本籍地がどこか分からない場合があるかと思います。
10年ほど前までは、運転免許証の表面に本籍地の記載がありましたが、現在はデータ化されてICチップの中にデータ化されています。

警察署や運転免許センターなどに設置されている確認端末や、免許証情報を読み取ることのできるスマートフォンのアプリを使用すれば、本籍地を確認することができます。
ただし、免許証の更新や登録時に設定した暗証番号が必要となります。


暗証番号を忘れてしまった場合や運転免許証を持っていない場合は、住民票の写しを取得して確認する方法があります。
注意すべき点は、基本的に住民票の写しは本籍地が省略されて発行されることが多いので、市区町村役場の窓口等で取得する場合は本籍地を記載してもらうように申し出ることです。

【現行制度】戸籍謄本の取得には手数料が必要になる

本籍地の市区町村役場で戸籍謄本等を取得する場合は手数料が必要になります。

多くの市区町村役場では、(現在の)戸籍謄本は450円、原戸籍謄本や除籍謄本は750円、戸籍の附票の写しは300円となっています。
被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの分が必要な場合は、戸籍謄本、原戸籍謄本、除籍謄本等が数通に及ぶ可能性が高いので総額で数千円になることがあるので、注意が必要です。

郵送で戸籍謄本等を取得する場合は、手数料を窓口で払うことができません。
事前に郵便局の窓口で定額小為替を購入するか、現金書留で納付する必要があります。


基本的に郵送するものとしては、

  1. 請求書(誰の戸籍、原戸籍、除籍謄本(又は抄本)が何通いるのか等を記入)
  2. 定額小為替(現金書留の場合は不要)
  3. 請求者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証等)のコピー
  4. 返信用の封筒及び切手

となります。
(上記1.については、それぞれの市区町村役場のホームページからダウンロードできる場合が多いです。
 代理人が請求する場合は委任状が別途必要になることもあるので、請求先の市区町村役場に問い合わせるのが確実です。)

【改正後】戸籍法が変わって戸籍謄本に関する手続きが楽になる

令和1年5月24日に「戸籍法の一部を改正する法律」が成立し、令和5年度中には施行が予定されています。
予定通りなら、令和6年4月以降には新たな制度の運用が開始されており、戸籍謄本に関する手続きが楽になります。
大きな改正点は以下のとおりです。

1.本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本を取得することができる

相続手続きにおいては、相続人が誰になるかを確定させるのに被相続人の出生から死亡までの全ての期間の除籍謄本等が必要になることが多いです。

上述のとおり、戸籍謄本等は本籍地の市区町村役場で管理されています。
生前に本籍地を移転していた場合には出生から死亡までの書類の取得が1つの市区町村役場で完結しないことがあります。
例えば、①出生した時の本籍地が大阪府堺市で、②結婚で東京に移り住んだので東京都町田市に本籍地を移転し、③定年後に北海道に移り住んで北海道札幌市に本籍地を移転して死亡した、場合は、①堺市、②町田市、③札幌市の3つの役所で除籍謄本等を取得しなければなりません。

これが、法改正によって住所地や勤務先等の最寄りの市区町村役場において、除籍謄本等を取得できるようになる予定です。
(従前の例で言えば③札幌市の役所で①②の除籍謄本等も取得できるようになります。)


ただし、「法務省HP:戸籍法の一部を改正する法律について」の「改正の概要」によると「自らや父母等」の戸籍謄本についての説明となっていますので、相続人が兄弟姉妹で、結婚等で父母の戸籍から除籍されている場合は別途他の市区町村役場に請求が必要な可能性があります。
より具体的な制度運用についての発表が待たれるところです。

2.マイナンバー制度を利用して戸籍謄本等の提出が不要になる

「法務省HP:戸籍法の一部を改正する法律について」の「改正の概要」によると、

各種の社会保障手続の際に記載していただいているマイナンバーを利用することにより、窓口機関において、親子関係や婚姻関係等を確認することが可能となるため、従来これらの手続で提出が必要だった戸籍謄抄本の添付が省略できます。

とされており、従来戸籍謄本等が必要だった行政手続きが、法改正によって戸籍謄本等を省略して手続きが可能になるようです。
相続に関係するところでは、「児童扶養手当の支給事務における死亡の事実の確認」、「奨学金の返還免除事務における死亡の事実の確認」などが予定されているようです。

注意すべきなのは、この戸籍謄本の省略はマイナンバーが必要になるということです。
マイナンバーの提出がなければ従来どおりに戸籍謄本を取得して提出する必要があるかもしれません。

【改正後】戸籍法の改正によるその他の影響

相続以外にも、婚姻届や養子縁組届などの様々な戸籍の届出の際に戸籍謄本等の提出が不要になる予定です。

また、あらかじめ発行されたパスワードを利用し、行政機関のシステム端末から戸籍情報を取得できる「戸籍電子証明書」という新しい証明制度も開始される予定です。


より詳しく知りたい方は「法務省HP:戸籍法の一部を改正する法律について」をご覧下さい。

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