相続手続きに必要な戸籍関係書類の概要
本日は相続に関する内容です。
不動産の相続登記、預貯金の承継、株式の名義書換等の各種相続手続きにおいて必要な書類としてまず第1に戸籍謄本が考えられます。
今回は戸籍の仕組みと相続手続きに必要な戸籍関係の書類について、簡単に解説していきます。
戸籍の記載の原則は両親と子供
相続手続きのために役所で取得する戸籍謄本の元となっているのが「戸籍」です。
「戸籍」は戸籍法に基づいて、市町村の区域内に本籍を定める1組の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに編製するというのが原則です。(戸籍法第6条)
つまり、両親と未婚の子供は同じ戸籍に記載されています。
そして、子供が婚姻すると原則に従って、子供夫婦で新しい戸籍が編成されます。
元々記載されていた両親の戸籍の子供については、婚姻によって戸籍から外された(除籍された)旨が記載されます。
戸籍に記載されている具体的な事項
戸籍は、まず最初に「本籍」と「戸籍筆頭者(最初に名前を記載する者)」が記載されています。
「戸籍筆頭者」は、夫婦の内で夫の氏を称する時は夫の名前、妻の氏を称する時は妻の名前になります。
戸籍筆頭者の次は、戸籍筆頭者の配偶者、その次に子供について記載されるようになっています。
これらの各人(1組の夫婦と子供)について、それぞれ
- 氏名
- 出生の年月日
- 戸籍に入った原因及び年月日
- 実父母の氏名及び実父母との続柄
- 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
- 夫婦については、夫又は妻である旨
- 他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
- 出生・婚姻・離婚・養子縁組・離縁・死亡などの身分事項
などが記載されます。
よって、戸籍を見れば、人の出生から死亡までの事実や家族関係について理解することができます。
戸籍謄本は戸籍の内容が記載され、証明された書類なので、多くの相続手続きにおいては戸籍謄本が必要とされます。
「戸籍謄本」には、戸籍の全員が記載されている
「1組の夫婦とその子供」という1単位の「戸籍」の写しであり、その全員についての身分事項(出生、婚姻関係、養子縁組、死亡等)について証明された書類が「戸籍謄本」です。
一方、「戸籍」に記載された一部の者(夫のみ記載、妻のみ記載など)についての身分事項について証明された書類を「戸籍抄本」と言います。
実務上、相続手続きにおいては、死亡した者(被相続人)の相続人を確定させる必要があるため、「戸籍」に記載された全員を確認した方が家族関係が把握しやすくなるので「戸籍謄本」を取得することが多くなります。
しかし、「戸籍」に記載された一部の者だけが相続人で、他の者は法律上直接関係がない場合があります。
そういった場合は、関係ない者が記載されていない「戸籍抄本」しか市役所で取得できないこともあります。
(例えば、夫の弟が死亡し、夫が相続人になった場合などがあります。夫以外の妻と子は相続には無関係なので、手続方法によっては、戸籍の夫の内容だけを抜き出した戸籍抄本しか取得できないことがあります。)
現在の戸籍謄本だけでは、相続人が確定しない
これまでの説明で、現在の戸籍謄本を1通取得すれば「1組の夫婦とその子供」の全員についての身分事項が記載されているので、相続人を確定するのは容易に思えるかもしれません。
しかし、実際は単純ではありません。
なぜなら、現在の戸籍謄本で分かるのはあくまで「戸籍に記載された時点から現在までの内容」だからです。
例えば、婚姻によって戸籍が編成され、その後死亡した場合に現在の戸籍謄本に記載されているのは「婚姻後から死亡までの内容」です。
死亡した人が再婚の場合、前夫の戸籍に子供がいるかもしれません。(子供は法定相続人になります。)
子供がいても既に死亡している可能性もあります。(子供が先に死亡していた場合は、相続人になりえません。)
これらの事実は現在の戸籍謄本を見ただけでは分かりません。
また、戸籍は法律や命令によって作り替えられる「戸籍の改製」が何度も行われてきました。
この「戸籍の改製」に関して重要な点は、改製する時点で戸籍に記載されていた者のみを新しい戸籍に記載するので、過去に結婚や死亡などで戸籍から外された者は記載されなくなります。
つまり、現在の戸籍謄本には記載されていない相続人が、別の戸籍に存在している可能性があるのです。
このようなことから、相続人の確定には現在の戸籍謄本以外に過去の戸籍謄本(除籍謄本等)も必要になります。
相続手続きに必要な書類について
では、具体的に相続手続きにおいて何が必要なのでしょう。
不動産、預貯金、保険等さまざまな相続手続きに必要な戸籍関係の書類として、基本的に以下の1~4が必要になると考えられます。
- 被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの全ての除籍謄本等
- 相続人の現在の戸籍謄本(又は抄本)
- 被相続人の住民票の除票の写し(又は戸籍の除附票の写し)
- 相続人の住民票の写し(又は戸籍の附票の写し)
なお、相続手続きをする財産の種類や実際の相続関係によっては、上記書類の内の一部だけでも手続きが可能な場合や、逆に追加書類が必要な場合もあります。
具体的に何が必要かは、書類提出先に事前に確認することをお勧めします。
1.被相続人の出生から死亡までの除籍謄本等
相続人が誰になるかを確定させるには、被相続人の出生から死亡までの全ての期間の除籍謄本等が必要になります。※
既に述べたとおり、現在の戸籍謄本だけでは、被相続人(亡くなった人)の全ての相続人を把握することはできません。
被相続人の出生から死亡までの除籍謄本等の全ての身分事項を確認して初めて、婚姻、養子縁組、子供の有無、直系尊属(両親や祖父母)の有無、兄弟姉妹の有無等の相続に関係する事柄について完全に把握することができるからです。
※ここで「除籍謄本等」は、「(現在)戸籍謄本、(改製)原戸籍謄本、除籍謄本」の意味で使用しております。
詳細についてはこちら
(本コラム末尾「戸籍に関する書類のまとめ」に飛びます)
2.相続人の現在の戸籍謄本(又は抄本)
被相続人の出生から死亡までの除籍謄本等を確認すれば、相続人の氏名や本籍について、ほぼ確認できるかと思います。
被相続人と相続人が同じ戸籍に記載されていれば問題ありませんが、婚姻等で相続人の新たな戸籍が作られている場合は、別途その戸籍謄本(又は抄本)も取得する必要があります。
相続人の戸籍謄本(又は抄本)が取得できれば、その相続人が現に存在する(死亡していない)ということを確認することができます。
逆に取得できなければ、その相続人が現に存在していない可能性もあり、代襲相続や数次相続などの複雑な相続関係となっていることも考えられます。
3.被相続人の住民票の除票の写し(又は戸籍の除附票の写し)
手続きによっては、被相続人の最後の住所や死亡するまでの住所の沿革が分かる書類が必要になることがあります。
「住民票の写し」は一般的に「市役所等で手数料を払って取得する住民票」のことです。
(「写し」とは言ってもコピーのことではありません。)
被相続人は死亡して住民登録が除かれているので、その被相続人の住民票の写しについて特に「住民票の除票の写し」と言います。
「戸籍の附票の写し」は戸籍同様に本籍地の市区町村役場において管理される書類で、戸籍に記載された者の住所の沿革が記載され、証明された書類になります。
被相続人は死亡して戸籍から除籍されているので、除籍された者の戸籍の附票の写しについては、特に「戸籍の除附票の写し」と言います。
4.相続人の住民票の写し(又は戸籍の附票の写し)
相続手続きにおいて、相続人の現住所を証明する書類として必要になることがあります。
書類については上記3のとおりです。
戸籍謄本には本籍は記載されていますが、住所の記載がないので、住民票の写しに本籍を記載して発行し、戸籍謄本と住民票の写しの人物の同一性を確認することもあります。
(住民票の写しは請求時に指定しなければ本籍が省略された状態で発行されます。戸籍の附票の写しは原則、本籍が記載されています。)
戸籍に関する書類のまとめ
〈書類の名称〉 | 〈概要〉 |
(現在)戸籍謄本 | 現在の戸籍に記載された全員の 身分事項について記載され、 証明された書類 |
(改製)原戸籍謄本 | 戸籍が改製(法律や命令によって 作り変えられること)されて 新たな戸籍が作成された場合に、 古い方の戸籍の全員の身分事項に ついて記載され、証明された書類 |
除籍謄本 | 婚姻や死亡などのさまざまな理由で 戸籍の全員が抜けてしまった (除籍された) 状態の古い戸籍の 全員の身分事項について記載され、 証明された書類 |
戸籍全部事項証明書 | 戸籍がコンピュータ化された 市区町村で発行される証明書 (戸籍謄本と内容は同じと考えられる) |
戸籍個人事項証明書 | 戸籍がコンピュータ化された 市区町村で発行される証明書 (戸籍抄本に対応するもので、 内容は同じと考えられる) |
(戸籍、原戸籍、除籍)抄本 | (戸籍、原戸籍、除籍)謄本が 全員の身分事項について記載 されているのに対し、 一部の者に ついてのみ記載されたもの |
戸籍の附票(の写し) | 戸籍に記載された者の住所の沿革が 記載され、証明された書類 |
戸籍の除附票(の写し) | 死亡、本籍の変更などで戸籍から 除籍された者の戸籍の附票 |
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