株式会社で必要な登記申請をしなければどうなるか

本日は商業登記の内容です。
株式会社の登記は法務局という役所で管理されています。1社ごとに個別の「登記記録」があり、「登記記録」に記載されている内容に変更があった場合は、登記申請をする必要があります。
では、もし変更があっても登記申請しなければどうなるのか。
今回は、株式会社で必要な登記申請を行わなかった場合どうなるかについて簡単に解説します。
株式会社の登記記録に記載されている内容は?
そもそも株式会社の「登記記録」に登記するべき内容は、会社法という法律で定められており、その内容を要約すると下記のとおりとなります。(会社法第911条第3項)
①会社の目的
②会社の商号
③本店及び支店の所在場所
④株式会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定め
⑤資本金の額
⑥発行可能株式総数
⑦発行する株式の内容
⑧単元株式数
⑨発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
⑩株券発行会社である旨
⑪株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所
⑫発行した新株予約権について一定の内容
⑬株主総会招集手続における株主総会参考資料の電子提供措置に関する定め
⑭取締役の氏名
⑮代表取締役の氏名及び住所
⑯取締役会設置会社である旨
⑰会計参与設置会社である旨、会計参与の氏名又は名称及び計算書類備置場所
⑱監査役設置会社である旨
⑲監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨
⑳監査役の氏名
㉑監査役会設置会社である旨及び社外監査役である旨
㉒会計監査人設置会社である旨、会計監査人の氏名又は名称
㉓一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名又は名称
㉔特別取締役による議決の定めについて一定の内容
㉕監査等委員会設置会社である旨及びその一定の内容
㉖指名委員会等設置会社である旨及びその一定の内容
㉗取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の責任の免除についての定め
㉘非業務執行取締役等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定め
㉙貸借対照表の内容について電磁的方法で提供を受けるためのホームページアドレス
㉚公告方法
このように、登記すべき事項は多岐にわたります。
特に、株式に関する事項(上記赤字のもの)と取締役、監査役等の役員その他の職務を行う者に関する事項(上記青字のもの)はかなりあるのが分かります。
株式は株式会社の事業の根幹をなすものであり、事業資金の獲得のために積極的に株式や新株予約権を発行すれば、株式に関する事項の登記申請も頻繁に必要になってくると考えられます。
株主が増えてくると、発行条件や配当が違う数種類の株式を設定する必要なども出てくるかもしれず、それらについても登記を必要とします。
また、取締役、監査役等の役員その他の職務を行う者は任期があるので、定期的に役員変更の登記申請を行わなければなりません。
任期が短い場合だと毎年のように役員変更登記が必要な会社もあります。
基本的に登記申請は変更のあった時から2週間以内に行う
会社法において、上記のような株式会社の登記された事項に変更があった場合は、変更のあった時から2週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならないとされています。
(2週間の起算日については、設立など一部の例外はあります。)
2週間を過ぎてしまった場合でも登記申請は可能ですが、それは法律で定められた期間内での登記申請を怠った(登記懈怠)ということになり、会社の役員等個人に対し、100万円以下の過料が課される可能性があります。(会社法第976条)
実務上、過料が課されるのは代表取締役社長の場合が多いかと思います。
また、2週間を数日過ぎた程度で過料が課される可能性はかなり低く、また仮に課されたとしても、いきなり100万円が課されるわけではなく(上限が100万円)、実際は数万円程度になると考えられます。
小規模の株式会社が登記懈怠になることが多い
上場会社などは法務部等もあるので、登記懈怠になることは少ないかと思われます。
一方で株主が1名の会社や、家族経営などの比較的小規模な株式会社では本来の事業に集中して、いつの間にか登記懈怠になることが多くあります。
また、実務上、登記懈怠の他にも役員選任懈怠というものも多くあります。
これは、例えば非公開会社では取締役や監査役の任期を最長で10年にすることができるので、次の任期がいつなのか忘れてしまって、任期が終わっているのにもかかわらず、新たな取締役や監査役を選任していなかったというものです。
法律上しかるべき時期に選任すべき役員を選任しなかったということで、こちらも過料の対象となるので注意が必要です。
登記をしなければ、事業自体に損害が出る可能性もある
登記をしないことによる弊害は過料だけではありません。
会社法では、「登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。(会社法第908条第1項)」とし、また、「故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。(会社法第908条第2項)」とも規定しています。
例えば、代表取締役を解任して新しい代表取締役を選定したにもかかわらず、その旨の登記をしなければ、登記記録上は代表取締役の交代はありません。
解任された代表取締役が会社を代表して、誤った状態の登記を信頼した第三者と勝手な取引を行った場合、第三者は保護され、会社自身がその取引による損害を負担しなければならない可能性なども考えられます。
株式会社の登記は北花田司法書士事務所へ
登記すべき事項について変更がある場合は、なるべく早く司法書士に依頼することが登記懈怠を防ぐことになります。
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また、登記申請には株主総会議事録や取締役会議事録などの様々な添付書面が必要になります。
そういった書類の適切な内容についても当事務所にご相談下さい。
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