住所や氏名の変更登記は必要か

本日は不動産登記に関する内容です。
不動産を売却する場合や銀行の担保権(抵当権など)を抹消する場合に、司法書士に登記を依頼し、見積書をもらうと登記名義人(所有者)の「住所変更登記」や「氏名変更登記」という名目の費用も見積書に含まれていることがあります。

「不動産の売却あるいは担保権の抹消の登記だけを依頼したのに、「住所変更登記」や「氏名変更登記」がなぜ必要になってくるのか?」

「住所や氏名の変更は市役所に届け出たはずなのに、これらの登記は何なのか?」

そんな「住所変更登記」や「氏名変更登記」について簡単に解説します。

登記記録の「権利部(甲区)」で住所や氏名の変更登記が必要かが分かる

司法書士に依頼する自分の所有不動産の登記記録を確認すれば、「住所変更登記」や「氏名変更登記」が必要かどうかが分かります。

以下のとおりです。

「登記記録の権利部(甲区)の住所」と「現在の住所」が異なる
「住所変更登記」が必要な可能性大 ※

「登記記録の権利部(甲区)の氏名」と「現在の氏名」が異なる
「氏名変更登記」が必要な可能性大 ※


「登記記録の権利部(甲区)の住所氏名」と「現在の住所氏名」が全く同じ
「住所変更登記」も「氏名変更登記も不要


※ 例外があります。詳細は後述のこちら

登記記録の「権利部(甲区)」と書かれた部分は「所有権に関する事項」、すなわち「登記上の所有者としての自分の住所氏名」が記録された部分になります。
この部分が現在の住所氏名と一致しない場合は「住所変更登記」や「氏名変更登記」が必要となります

なぜ、住所氏名が一致しないことがあるのか

この「登記上の所有者としての自分の住所氏名」は、基本的には「その不動産を取得した当時の住所氏名」になるので、不動産を取得した後に引っ越しで住所が変わったり、養子縁組や結婚で名字が変わったりしていると当然に現在の住所氏名とは一致しなくなります。
きちんと市役所で住民票、養子縁組、婚姻届の手続きをしても登記内容は自動的には変更になりません。
こちらのページもご覧下さい。)

よって、不動産を売却する場合や銀行の担保権(抵当権など)を抹消する場合に「住所変更登記」や「氏名変更登記」を申請しなければ、「登記記録の所有者の住所氏名」と「不動産売却に伴う売主の住所氏名」、「担保権抹消に伴う現在の所有者の住所氏名」等が合致しなくなり、登記は却下されてしまいます。(不動産登記法第25条第7号)

実際の「住所変更登記」や「氏名変更登記」の判断は複雑

上記のとおり登記記録の「権利部(甲区)の住所氏名」は、「その不動産を取得した当時の住所氏名」であり、不動産取得後に引っ越しや養子縁組、結婚等により「現在の住所氏名」が変更になった場合は「住所変更登記」や「氏名変更登記」が必要であると述べました。

基本的にはこのとおりで問題ないのですが、実務上は「住所変更登記」や「氏名変更登記」の要否の判断にはさまざまな要因も絡んで複雑なものもあり、「権利部(甲区)の住所氏名」と「現在の住所氏名」が異なっている=「住所変更登記」や「氏名変更登記」をすれば良い、とは一概には言えません。

〈「住所変更登記」や「氏名変更登記」の要否の判断要因となる事例〉

・ 引っ越ししていないが、住所が変更になった。
  ex.堺市北花田町→堺市北区北花田町(区政施行)
  ex.北花田町一丁57番地→北花田町一丁3番10号(住居表示実施)


・ 原因は不明だが、「権利部(甲区)の住所氏名」が「現在の住所氏名」と一致しない。
  ex.「北花田町」なのに「南花田町」と町名が誤って登記されていた。
  ex.名字が山「﨑」なのに山「崎」で登記されていた。(漢字が違う)

  ex.「佐藤」なのに別人の「鈴木」が登記されていた。


上記はほんの一例ですが、「住所変更登記」や「氏名変更登記」の代わりに別の登記申請が必要であったり、住所氏名が異なっていても「住所変更登記」や「氏名変更登記」が不要となることもあり、その判断は注意を要します。

よって、不動産の登記申請行為は本人からも可能ですが、司法書士に依頼する方が間違うことが無く確実です。

「住所変更登記」や「氏名変更登記」は義務化される予定

これまでは「住所変更登記」や「氏名変更登記」を申請するのは任意で、住所や氏名を変更してもその登記だけを申請することは少なく、先に述べた不動産の売却や担保権の抹消という目的があり、その前提として「住所変更登記」や「氏名変更登記」を申請する場合が多くありました。

しかし、令和3年(2021年)の不動産登記法の改正によって、令和8年(2026年)4月までに「住所変更登記」や「氏名変更登記」が義務化されることになりました。

所有者の登記名義人(所有者として「権利部甲区」に登記された者)は、住所や氏名等の変更から2年以内に登記を義務づけられ、正当な理由のない申請漏れには過料の罰則が課される予定です。

「住所変更登記」や「氏名変更登記」のご依頼は北花田司法書士事務所へ

不動産の売却や担保権の抹消の登記の前提として、登記名義人(所有者)の「住所変更登記」や「氏名変更登記」は誤らずに申請する必要があります。
今後は義務化も予定されており、登記申請を放置すると予期せぬ過料が課される可能性もあります。
ご不安な方はこちらのページから当事務所までご連絡下さい。