有限会社と株式会社の違いについて

本日は商業登記で取り扱う「有限会社」という会社形態の内容です。
会社の種類の中で最も一般的なのは株式会社ですが、「有限会社」というものも目にすることがあると思います。
「有限会社」はどういうものか、主に株式会社との違いについて簡単に解説します。

有限会社は歴史のある会社

「有限会社」の特徴を一言で表すと、「株式会社よりも小規模な会社」となるでしょう。
最低限の有限会社設立には株式会社ほどの資金や取締役の人数を必要としませんでした。

2006年(平成18年)5月1日に会社法という法律が施行されました。これは会社に関する法律の抜本的な改正でした。この法律によって「有限会社」を新たに設立することはできなくなりました。
つまり、現在残っている「有限会社」は2006年以前に設立された会社だと言うことができます。

「有限会社」は会社の規則である定款を変更して、株式会社又はその他の会社形態に変更することもできますが、そうしない場合は「特例有限会社」という株式会社の一形態として扱われることとなっています。

有限会社と株式会社の違い

現在の「有限会社」(上記記載の特例有限会社)と株式会社の違いはいくつかありますが、主に法務的・登記的な観点から見ていきたいと思います。

1.有限会社は決算公告が不要

一部例外はありますが、基本的には株式会社は事業年度ごとの決算について貸借対照表等の計算書類を作成し、株主総会で承認を受けた後に官報、日刊新聞、電子公告などで決算公告を行う必要があります。(会社法第440条)

一方、「有限会社」については、決算に関する法律が適用除外となっているので、決算公告は必要ありません。(会社整備法第28条)
よって、官報や日刊新聞で公告をする場合の掲載費用はかかりませんし、電子公告のためのホームページの運営等の手間もかかりません。

2.有限会社の取締役や監査役は任期がない

株式会社の役員である取締役や監査役には任期があります。(会社法第332条、第336条)
基本的に取締役は2年、監査役は4年ごとに任期が来てその都度、株主総会や取締役会等で選任し直す必要があります。
(会社が発行する株式の譲渡・取得に関し、その会社の承認を要する非公開会社の場合は最長10年まで任期を伸張できます。)

一方、「有限会社」については、任期がありません。(会社整備法第18条)

株式会社では役員の任期満了に伴う新たな選任手続き(同じ人物が再任した場合も含む。)及びその変更に伴う法務局への登記申請が必要になります。
この役員選任手続きの手間や登記にかかる費用は、役員の任期のない「有限会社」には当然必要ありません。

ただし、死亡や辞任等で役員の内容が変更になった場合には「有限会社」でも選任手続きや登記申請は必要になります。

3.有限会社は株主同士の株式譲渡は会社の承認がいらない

株式会社においては、原則株式の譲渡は自由です。
しかし、自社の事業運営の都合上、好ましくない株主が現れるのを防ぐために、発行した自社株式の譲渡・取得に関し、自社の承認が必要とすることを会社の規則である定款で決めることができます。(会社法第107条第1項、会社法第108条第1項)

一方、「有限会社」の株式の譲渡・取得に関しては、
①株主以外が株式を譲渡により取得する場合は会社の承認が必要
②既に株主である者が株式を譲渡によりさらに取得する場合は会社の承認は不要
③上記①②の内容は変更不可
とされています。
(会社整備法第9条)

よって、「有限会社」においては、自社にとって好ましくない者が株主になることは防ぎつつ、株主間においては会社の承認手続きを経ず、容易に持ち株数を変更できるということになります。

これは変更不可の規定なので、例えば事業拡大のために株式の譲渡をやりやすくしたい場合は不都合となります。
この点において株式会社の方がある程度自由に株式の譲渡に関して制限をかけることができます。

4.有限会社は他の会社を吸収合併して大きくなれない

株式会社は、吸収合併をすることができます。
この場合、吸収される会社の権利義務は吸収する株式会社に引き継がれ、消滅してしまいます。

一方、「有限会社」は他の会社を吸収する吸収合併はすることはできません。(会社整備法第37条)
ただし、吸収されて消滅する会社にはなることができます。

よって、
株式会社が「有限会社」を吸収する合併はできる。』
逆に
『「有限会社」が株式会社を吸収する合併はできない。』
ということになります。


同様に会社分割、株式交換、株式移転のなどの組織再編においても「有限会社」にはできない場合がありますので、注意が必要です。

有限会社の登記のご依頼は北花田司法書士事務所へ

法律改正によって「有限会社」が新たに設立されることはありません。
しかし、法律改正前に設立された「有限会社」は現在も多数存在します。
上記のとおり「有限会社」は株式会社と違いもあるため、登記申請には注意が必要です。
「有限会社」に関してのご依頼のある方はこちらのページから当事務所までご連絡下さい。